汚染されていない全国でも極めて貴重な小網代湾の干潟
貴重な生き物の宝庫、小網代湾の干潟(2018/07/01 中潮) 今回は、干潟を紹介する第二弾。三浦半島南部には、江奈湾、小網代湾、毘沙門湾と3つの干潟があり前回が江奈湾、今回は、「小網代湾の干潟」を紹介する。小網代湾の干潟は、三浦半島先端にある相模湾に面した約70haの「小網代の森(こあじろのもり)」の河口にある。この小網代の森は、長さが約1キロほどの川の源流が、湿地、河口の干潟などを形成し海まで流れていて、関東地方で唯一の自然環境と言われている。こうした流域の生態系が残る場所は全国でも極めて珍しく、源流から海までの生態系が自然のまま残されているのは、首都圏では小網代の森だけと言われている。小網代の森の中でも特に重要なものが、河口部に広がる3ヘクタールの塩水干潟の小網代湾の干潟だ。河口にある干潟はふつう、汚染物質が流れ込みやすく必然的に汚染を免れまない。ところが網代湾の干潟は、まったく汚染されていない巨大干潟で全国でも極めて貴重な存在だ。小網代の森の70haの流域には、家も工場も舗装路もなく上流部からの水や土砂が干潟に流れ込む。小網代の干潟は、世界レベルで見ても希少種を含む多くの生き物たちが多様な生態系を形成している。神奈川県が多額の費用をかけ土地を取得し平成17年に国が近郊緑地保全区域に指定した。その後も、看板、散策路など最低限の整備を行い平成26年7月20日から一般開放されている。小網代の森は、絶滅危惧種を含む2,000種以上が生息している生物の宝庫だ。 |
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カニの穴がいっぱいある干潟 |
広大な干潟 |
干潟へは立ち入り禁止 |
干潮時に出てくる岩の磯 |
干潟の生き物は、岩の磯から観察 |
カニのダンスを見ている子どもたち |
小網代湾の干潟で見かけた生き物
アカデガニ と ベンケイガニ
アカテガニ網代の森といえば、「アカテガニ」が象徴。カニの多くは、海辺や川辺にいるのだが「アカテガニ」は珍しく森の中で生活をするカニ。アカテガニは、小網代の森のように森と海が一体となった自然環境が必要なカニ。夏の大潮の晩に、母ガニはいっせいに海岸に押し寄せ、お腹に抱えた幼生(ゾエア)を海に放つ。これを産卵と言わず放仔(ほうし)というとのこと。幼生は1ヶ月ほど海で育ち、子ガニとなって陸に上がって生活を始める。何万ものゾエア幼生は、ボラなどの餌となり、生き残れるのは僅か1~2体とのこと。 ベンケイガニ網代の森で、アカデガニと似ていて間違ってしまうカニに、「ベンケイガニ」がいる。ベンケイガニは、河口部のアシ原を中心に暮らし、よくアカテガニと間違える。見分け方は、ベンケイガニの目の横の縁部分がギザギザになっていて、甲もはほぼ四角ででこぼこが目立つ。アカテガニもベンケイガニにも、海から離れて暮らすことができるカニでベンケイガの方が内陸よりも海に近い環境で暮らしている。 |
「アカデガニ」?「ベンケイガニ」? 判別つかず |
小網代湾の干潟で見かけたカニ
チゴガニ江奈湾と同様、小網代湾の干潟にも「チゴガニ」がいっぱいいて、ウェービング(カニダンス)をあちらこちらでしているのを見ることができる。人が近づくとすぐに穴に潜ってしまうのでそっと観察しよう。チゴガニは、白いハサミと水色のかをが目立つのですぐにわかるカニだ。チゴガニのウェービング(カニダンス)は、一連の動きをすばやく休みなく続けるのが特徴。雄のみが行うため、雌に対するディスプレイで他の雄個体に対する威嚇であると考えられているが定かではないとのこと。 |
小網代湾のチゴガニ |
チゴガニのウェービング |
チゴガニが手を上げた瞬間 |
ヤマトオサガニ今回、小網代湾の干潟には多くの「ヤマトオサガニ」がいた。眼が長いのが特徴で、泥地を好み干潟では代表的なカニ。今回は、干潮時と言うこともあり雄が大きなハサミを上下に動かしてメスにアピールするウェービング(カニダンス)が見られた。ヤマトオサガニのウェービング(カニダンス)は、ハサミを閉じたまま目の高さまで上下させる動きを繰り返すのが特徴。歩きながらウェービング(カニダンス)しているヤマトオサガニもいる。 |
ヤマトオサガニ |
ヤマトオサガがたくさん |
ハサミを閉じたまま目の高さまで上下させる瞬間 |